シゲル博士のFX研究室

最終更新日 : 2020/04/20

2変量対数正規分布

Mathematics

2変量正規分布

2変量正規分布の定義

確率変数$(X, Y)$が2変量正規分布に従うとき,$(X, Y) = (x, y)$となる同時確率分布は,$(\mu_{x}, \mu_{y}, \sigma_{x}, \sigma_{y}, \rho)$をパラメータとして,

\[ g(x, y) = \frac{1}{2\pi\sigma_{x}\sigma_{y}\sqrt{1 – \rho^{2}}} \exp \left( -\frac{1}{2(1 – \rho^{2})} \left[ \frac{(x – \mu_{x})^{2}}{\sigma_{x}^{2}} – 2\rho\frac{(x – \mu_{x})(y – \mu_{y})}{\sigma_{x}\sigma_{y}} + \frac{(y – \mu_{y})^{2}}{\sigma_{y}^{2}} \right] \right) \ , \]

と表される.$g(x, y)$を$y$で積分したもの

\[ g_{X}(x) \equiv \int_{-\infty}^{\infty}dy \, g(x, y) = \frac{1}{\sqrt{2\pi\sigma_{x}^{2}}} \exp \left( -\frac{(x – \mu_{x})^{2}}{2\sigma_{x}^{2}} \right) \ , \]

を$X$の周辺分布と呼ぶ.この計算から,パラメータ$\mu_{x}$と$\sigma_{x}^{2}$は$X$の周辺分布$g_{X}(x)$の平均値と分散であることが分かる.同様に,$\mu_{y}$と$\sigma_{y}^{2}$は$Y$の周辺分布$g_{Y}(y)$の平均値と分散である.また,$\rho$は$X$と$Y$の相関係数であり,$\braket{XY} = \rho\sigma_{x}\sigma_{y}$である.

2変量正規分布の条件付き確率分布

確率変数$Y$が$Y = y_{0}$という値を取ったという条件の下で,確率変数$X$の従う確率分布は,

\[ g_{Y = y_{0}}(x) = \frac{g(x, y_{0})}{g_{Y}(y_{0})} = \frac{1}{\sqrt{2\pi\sigma_{x}^{2}(1 – \rho^{2})}} \exp \left( -\frac{1}{2\sigma_{x}^{2}(1 – \rho^{2})} \left[ x – \mu_{x} – \frac{\rho\sigma_{x}}{\sigma_{y}}(y_{0} – \mu_{y}) \right]^{2} \right) \ , \]

となる.したがって,$g_{Y = y_{0}}(x)$は,平均値$\mu_{x} + \dfrac{\rho\sigma_{x}}{\sigma_{y}}(y_{0} – \mu_{y})$,分散$\sigma_{x}^{2}(1 – \rho^{2})$の正規分布に従う.

特に,$X$と$Y$の周辺分布が等しいとき,$\mu \equiv \mu_{x} = \mu_{y}$,$\sigma \equiv \sigma_{x} = \sigma_{y}$と置くと,

\[ g_{Y = y_{0}}(x) = \frac{1}{\sqrt{2\pi\sigma^{2}(1 – \rho^{2})}} \exp \left( -\frac{1}{2\sigma^{2}(1 – \rho^{2})} \left[ x – \mu_{x} – \rho(y_{0} – \mu_{y}) \right]^{2} \right) \ , \]

となる.このときの平均値は$\mu_{x} + \rho(y_{0} – \mu_{y})$,分散は$\sigma^{2}(1 – \rho^{2})$である.

2変量対数正規分布

対数正規分布について知っておくべきことで書いたように,$g(x)$が正規分布であるとき,$f(x) = g(\ln x) / x$は対数正規分布となる.したがって,2変量対数正規分布は,

\begin{align*} f(x, y) &= \frac{1}{xy}g(\ln x, \ln y) \\ &= \frac{1}{2\pi\sigma_{x}\sigma_{y}\sqrt{1 – \rho^{2}}xy} \exp \left( -\frac{1}{2(1 – \rho^{2})} \left[ \frac{(\ln x – \mu_{x})^{2}}{\sigma_{x}^{2}} – 2\rho\frac{(\ln x – \mu_{x})(\ln y – \mu_{y})}{\sigma_{x}\sigma_{y}} + \frac{(\ln y – \mu_{y})^{2}}{\sigma_{y}^{2}} \right] \right) \ , \end{align*}

と表される.

2変量対数正規分布の周辺分布や,$X$と$Y$の平均値や中央値,最頻値などを計算してみてもよいが,$(X, Y)$が2変量対数正規分布に従うときには対応する2変量正規分布を用いて解析した方が便利である.

FXで月平均5万円・年利20%の利益を継続中(元本300万円)。感情を排除し、為替データの統計分析のみに基づき淡々とトレードするスタイル。FX歴6年の理学博士(専門:理論物理学)。「FXを科学する」