シゲル博士のFX研究室

最終更新日 : 2020/04/02

リピート系手法における通貨ペア選定基準

Data Analysis

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リピート系手法はFXにおいて非常に有効である.その理由はいくつか挙げられるが,感情の入らない機械的な取引ができるという点が最も大きい.国内FXでは4%の証拠金で(つまり資産の25倍まで)取引ができるため,一時の感情のゆらぎによる軽率な取引で,せっかく積み上げた利益を全て失うということが往々にして起こる.いかに取引ルールを厳密に設定し,感情が入らないようにトレードするかという点において,リピート系手法は簡便で実用的な手法なのである.

このページでは,どのような基準で取引通貨ペアを選ぶべきかについて,ひとつの解答を示す.

ここでは,為替レートが一定幅下がる(上がる)ごとに等しい量の買い(売り)ポジションを持ち,適当な利益幅で決済するというトレードを繰り返すことを,(狭い意味での)リピート系手法と呼ぶことにする.

リピート系手法での収益は,単位値幅あたりの取引量$\rho$(取引量密度)とその通貨ペアの典型的な値動き$\delta$の積$\rho\delta$に比例する.各通貨ペアに対して$\rho\delta$を適切に評価することで,最も利益を上げる可能性の高い通貨ペアを選定することができる.

この量を評価するに当たって,2通りの方法が考えられる.(1)取引量密度$\rho$と典型的な値動き$\delta$を独立に評価し,その積として$\rho\delta$を評価する方法と,(2)積$\rho\delta$の確率分布から$\rho\delta$の値を直接評価する方法である.どちらもそれほど難しくないので,両方の議論を行う.

(1)取引量密度$\rho$と典型的な値動き$\delta$を独立に評価する方法

取引量密度$\rho$の評価

適切な取引量密度$\rho$の評価は難しい.どの程度のリスクを許容するかという点に依存するからである.$\rho$の評価にはナンピンによる含み損の計算のページで導出した式

\[ \rho_{*} = \frac{2A}{(1 + 2 \, \text{sgn}(\Delta)\alpha)|\Delta|^{2} + 2\alpha r_{0}|\Delta|} = \frac{2A / r_{0}^{2}}{(1 + 2 \, \text{sgn}(\Delta)\alpha)(|\Delta| / r_{0})^{2} + 2\alpha(|\Delta| / r_{0})} \ . \]

を用いることができる.ここで,$A$は資産(日本円),$r_{0}$は現在レート,$\Delta$は値幅(すなわち$|\Delta| / r_{0}$は騰落率),$\text{sgn}(\Delta)$は$\Delta$の符号,$\alpha = 0.04$は必要証拠金割合である.

この式はロスカットレートを計算する方程式$A + Q = M$($Q$は含み損,$M$は必要証拠金)を取引量密度$\rho$について解いたものである.(詳細はこのページを参照のこと)

許容する値動き$|\Delta|$または騰落率$|\Delta| / r_{0}$を設定することで,最大取引量密度$\rho_{*}$を計算することができる.ここで,値動き$|\Delta|$と騰落率$|\Delta| / r_{0}$は異なる確率分布に従うので,どちらを推定量として用いるかによって結果は変わる.もちろん,どちらが正しいということはないので,両方の場合を考えて比較してみるのがよい.

許容する値動き$|\Delta|$や騰落率$|\Delta| / r_{0}$の大きさとしては,たとえば1年間の値動きや騰落率の標準偏差(の適当な定数倍)を用いるのが自然だと思われる.

あるいは,過去の最高値や最安値の値を用いるというのも理にかなっているかもしれない.たとえば,値動き$\Delta$に対して「過去の最安値までは耐えられるようにする」とか,騰落率$|\Delta| / r_{0}$に対して「リーマンショック級の下落率には耐えられるようにする」などである.

典型的な値動き$\delta$の評価

典型的な値動き$\delta$は,どのような時間スケールを考えるかによって変わる.為替相場は(ほぼ)ランダムウォークするので,$\delta$は時間の平方根にだいたい比例する.

ここでは$\delta$を評価する時間スケールとして1日を採用しよう.たとえばドル円の場合,1日の値動きの典型的な値$\delta$は$50 \sim 100 \, \text{jpy} / \text{usd}$程度(期間によって異なる)である.

$\delta$の評価方法としては,一日の値動きの標準偏差や,値幅の最頻値や中央値などの数値を用いることになる.

(2)収益$\rho\delta$の分布から評価する方法

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FXで月平均5万円・年利20%の利益を継続中(元本300万円)。感情を排除し、為替データの統計分析のみに基づき淡々とトレードするスタイル。FX歴6年の理学博士(専門:理論物理学)。「FXを科学する」