最終更新日 : 2020/02/13
単純RWモデルで用いる和の公式のまとめ
まず,最も基本となるのは,二項定理
\[ (a + b)^{N} = \sum_{u = 0}^{N} {_{N}}C_{u} a^{u}b^{N – u} \ , \]
で$a = b = 1$と置いた,
\[ \sum_{u = 0}^{N} {_{N}}C_{u} = \sum_{u = 0}^{N} \frac{N!}{u!d!} = 2^{N} \ , \]
である.ここで,$u$と$d$は常に$u + d = N$の関係があるとしている.単純ランダムウォークでの計算に用いることを想定しているので,ダミー変数にはupの$u$とdownの$d$を用いる.
次に,$N$ステップのランダムウォークで$+1$が出た回数$u$だけで決まるような量$f_{u}$の期待値
\[ \braket{f_{u}} = \frac{1}{2^{N}} \sum_{u = 0}^{N}\frac{N!}{u!d!} f_{u} \ , \]
を考えたい.実用上は$f_{u}$としてべき関数のみ考えれば十分である.そのためには,$v \le u$として
\[ f_{u} = {_{u}}C_{v} = \frac{u!}{v!(u – v)!} \ , \]
に対して$\braket{f_{u}}$を計算しておくとよい.簡単に計算できるので式変形は省略するが,結果は
\[ \braket{{_{u}}C_{v}} = \frac{1}{2^{N}} \sum_{u = 0}^{N} {_{N}}C_{u} \cdot {_{u}}C_{v} = \frac{{_{N}}C_{v}}{2^{v}} \ , \]
となる.もちろん,組み合わせ(Combination)${_{n}}C_{r}$でなく順列(Permutation)${_{n}}P_{r}$に対しても,$\braket{{_{u}}P_{v}} = {_{N}}P_{v} / 2^{v}$が成り立つ.
$v = 1$のとき,
\[ \braket{u} = \braket{{_{u}}C_{1}} = \frac{{_{N}}C_{1}}{2^{1}} = \frac{N}{2} \ , \]
が成り立つ.
$f_{u} = u^{2}$のとき,
\[ f_{u} = u^{2} = u + u(u – 1) = {_{u}}P_{1} + {_{u}}P_{2} \ , \]
と変形すれば公式を適用することができて,
\[ \braket{u^{2}} = \braket{{_{u}}P_{1}} + \braket{{_{u}}P_{2}} = \frac{N}{2} + \frac{N(N – 1)}{4} = \frac{N(N + 1)}{4} \ , \]
と計算できる.同様にして$\braket{u^{v}}$も計算できる.あとで使う可能性がある$\braket{u^{3}}$と$\braket{u^{4}}$の結果を示しておく.
\begin{align*} \braket{u^{3}} &= \frac{N^{2}}{8}(N + 3) \ , \\ \braket{u^{4}} &= \frac{N}{16}(N^{3} + 34N^{2} – 45N + 18) \ . \end{align*}
これを一般化するには,素朴には$u^{v}$を${_{u}}P_{\alpha} \, (\alpha = 1, 2, \dots, v)$で展開する必要があるように思う.これは良い練習問題になるだろう.
最後に,和の上限を$N$ではなく$[N / 2]$とした場合を考えよう.$[\dots]$はガウス記号で,$N = 2M$または$N = 2M + 1$のとき,$[N / 2] = M$である.このような和は,$|u|$のように,$u$と$d \, (= N – u)$の間に対称性がある場合の期待値を計算する際に現れる.
つまり,$N = 2M$または$N = 2M + 1$のとき,
\[ \sum_{u = 0}^{M} \frac{N!}{u!d!} f_{u} \ , \]
を計算したい.
$f_{u} = u$のとき
TBC